「医療DXは国策だし、絶対に普及する」
そう言われ続けているにもかかわらず、なぜ現場のDXは亀の歩みなのか?
臨床検査技師の私と、看護師の妻。日々それぞれの現場で働きながら感じている「医療DXが進まない本当の理由」を考察してみました。
1. 受診者の大半を占める「患者さんの高齢化」
病院やクリニックを利用するメイン顧客は70代以上の高齢者層です。
- Web予約、アプリ問診、オンライン決済など、投資家が「便利」と評価するシステムほど、高齢の患者さんにとっては大きな受診ハードルになる
- 自動精算機やWebツールを導入しても、操作説明にスタッフの手が取られ、結果的に「窓口で対面対応した方が早い」状態になる
- 「直接先生や看護師と顔を合わせて話したい」という対面ニーズが根強い
医療DXが進まない背景には、サービスを受ける患者さん側のデジタル障壁も大きく影響しています。
2. 「コストと投資回収」の壁(費用対効果が見えにくい)
- 莫大な費用: システム導入費だけでなく、毎年発生する保守費用やSaaSの月額利用料が経営を圧迫する
- 回収の難しさ: 一般企業と違い、医療機関は「診療報酬(国が決めた価格)」で収入が決まるため、ITを入れて業務効率を上げても直接収入が増えるわけではない
- 中小病院や個人クリニックでは、数百万〜千万円単位のIT投資に踏み切る余裕がないのが現実
3. 「ミス=患者の命に関わる」という極限の安全第一主義
- システムの不具合や入力ミスが、ダイレクトに誤薬・誤検査・生命の危険につながる
- 使い慣れた「電話・FAX・紙カルテ」の方が、現場としては「絶対に間違えない安心感」がある
- 「便利になる」ことよりも「絶対に事故を起こさない」ことの優先度が桁違いに高い
4. 業務が過密すぎて「新しいシステムを覚える余裕」がない
- 現場は常に人手不足で、日々の臨床業務に追われている
- 移行期間中に「入力が遅くなって患者さんの待ち時間が伸びる」「現場が混乱する」リスクを誰も負いたがらない
- 結果として「業務効率化のためのDX」が、短期的にはただの業務圧迫に見えてしまう
5. 多職種・多年代が入り混じる「運用の揃えにくさ」
- 医師、看護師、臨床検査技師、薬剤師、事務など、多様な職種と幅広い年代が存在する
- 誰か一人でも使いこなせないと、結局連絡は電話や紙に戻ってしまう
- 「全員が共通して使える最小公約数のツール」が、結果的に「電話とFAX」になってしまう
まとめ:医療DXに必要なのは「革新」ではなく「泥臭い安心感」と「費用対効果」
株式市場は「ITを導入すれば一気に効率化して利益が出る」と考えがちですが、医療現場のDXを阻んでいるのは、「提供者側の運用の重さ・コスト」と「利用者側の高齢化」という二重の壁です。
この双方の壁を理解し、患者さんにも現場にも負担をかけない形で普及させられるサービスが登場した時こそが、本当の投資チャンスだと考えています!


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