タラオでございます。
世の中のテクノロジー、特にAIやITの進歩には目を見張るものがありますよね。
医療の世界でも、新薬の開発や手術支援ロボット、治療法の進化などは連日のようにニュースで話題になっています。
しかし、私が今の職場に勤め始めてから16年。
現場で日々感じている「ある大きな違和感」があります。
それは、「治療や薬は進化しているのに、検査の分野だけは16年前から驚くほど変わっていない」ということです。
採血、検体検査、生理検査……細かな精度やスピードの向上こそあれど、検査の「やり方」や「根本的なプロセス」は、私が働き始めた当時と大きく変わっていません。
テクノロジーがこれだけ爆発的に進化しているのに、なぜ検査の現場だけは取り残されているように感じるのか?
その理由を自分なりに突き詰めて考えた結果、ひとつの残酷な現実に辿り着きました。
「検査という分野は、企業にとっても病院にとっても、あまり儲からないから」ではないでしょうか?
■ 1. 企業視点:開発コストとリスクに対して「リターンが少ない」
新しい検査機器や革新的な検査技術を開発しようとすると、莫大な研究開発費と長い年月がかかります。さらに医療機器ですから、国の厳しい承認プロセスをクリアしなければなりません。
それだけの苦労をして画期的な検査技術を作ったとしても、薬(製薬)のように「継続的に高価格で売れ続ける」というビジネスモデルになりにくいのが検査の世界です。
- 薬や治療: 開発に成功すれば、世界中で高額な薬が使われ続け、莫大な利益を生む。
- 検査: 一回あたりの価格(単価)が低く抑えられがちで、投資回収のハードルが高い。
企業からすれば、同じリスクをとって開発投資をするなら、圧倒的に利幅が大きい「治療薬」や「治療機器」に資金を投入するのがビジネスとして合理的になってしまうわけです。
■ 2. 病院視点:高額な機器を買っても「回収しにくい」構造
もうひとつは、受け入れる側の病院の経済事情です。
日本の医療は「診療報酬(国が決めた医療の価格)」によって成り立っています。
どんなに最新で最先端の素晴らしい検査機器を導入したとしても、国が定める「検査の点数(価格)」が低ければ、病院は機器の購入費用すら回収できません。
むしろ、検査の点数は年々削られる傾向すらあります。
病院経営の観点から見れば、「わざわざ数千万円〜数億円もする最新の検査機器を導入するリスク」を侵すくらいなら、「16年前から実績があって確実に動く、減価償却の終わった機器」を使い続ける方が、経営的に圧倒的に安全なのです。
■ 3. 「絶対失敗が許されない」という保守的な壁
さらに言えば、検査は「診断の根拠」になるため、誤判定やミスの許されない超保守的な世界です。
「AIで99%正確に判定できます」という最新技術よりも、「人間が泥臭くダブルチェックして過去16年間トラブルがない旧来の方法」の方が、法的な責任やリスク管理の観点から優先されてしまいます。
「安全性の壁」と「採算性の壁」。この2つが重なっているからこそ、検査の分野はイノベーションが起きにくい構造になっているのだと感じます。
■ まとめ:医療の進化を支えるのは「経済合理性」
16年間現場にいて「なんで変わらないんだろう?」と疑問に思っていましたが、構造をひも解くと、そこには「儲からないものには資金が集まりにくい」というシンプルな経済の仕組みがありました。
どれだけ素晴らしい技術があっても、それを使う人間(企業や病院)にとって経済的なメリットがなければ、現場まで普及することはありません。
テクノロジーの進化そのものだけでなく、「その技術がどうお金を生み、現場に還元される仕組みになるのか」というビジネスや制度の視点を持つことの大切さを、毎日の仕事を通じて強く実感しています。

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