【医療インバウンド】外国人患者を受け入れるのは賛成?日本人の医療を守る仕組みと、今の医療制度への疑問

厚生労働省が、外国人患者を受け入れる「医療インバウンド」について、病院の負担や地域医療への影響を検証する方針を示しました。

海外から治療や健康診断を目的に日本を訪れる外国人を受け入れる取り組みです。

これに対して、日本人の医療が後回しになるのではないか、医療従事者の負担が増えるのではないか、といった懸念もあります。

しかし、私は医療インバウンドそのものに反対ではありません。

むしろ、やり方次第では医療機関にとって大きな収益機会になるのではないかと思っています。

短期滞在の外国人患者は、基本的に自由診療です。

日本の保険診療とは違い、医療機関が診療価格を設定できます。

普段、保険診療の価格設定に疑問を感じることもあります。

医療従事者の専門性や労力に対して、今の診療報酬は十分なのだろうか。

それならば、外国人向けの医療は適正な価格で提供し、日本人の医療体制を圧迫しない仕組みを作ればいいのではないでしょうか。

今回は、医療インバウンドについて考えてみます。

1. 医療インバウンドとは?外国人患者を受け入れるメリット

医療インバウンドとは、治療や健康診断などを目的として、外国人が日本を訪れることです。

例えば、次のような医療が対象になります。

  • 心臓手術
  • がん治療
  • 人間ドック
  • 高度な画像診断
  • その他の専門的な医療

観光目的の訪日外国人が増える中で、医療を目的とした訪日も新たな産業として注目されています。

読売新聞の2026年11月3日の報道によると、日本には年間推計2万〜3万人が医療目的で渡航しているとされています。

また、タイや韓国では医療インバウンドが進んでおり、年間50万人以上の患者を受け入れていると報じられています。

日本には、高度な医療技術や医療機器、専門性の高い医療従事者がいます。

こうした医療資源を海外の患者にも提供することは、医療機関の収益につながる可能性があります。

さらに、人口減少によって将来的に日本人の患者数が減少すれば、医療機関の経営も難しくなるかもしれません。

外国人患者を受け入れることで、医療機関の経営や医療技術、人材の維持につながるという考え方には理解できます。

2. 外国人患者は自由診療。適正な価格で医療を提供できる

私が医療インバウンドに可能性を感じる理由の一つが、自由診療であることです。

ここで少し、保険診療と自由診療の違いを整理します。

保険診療と自由診療の違い

日本の保険診療では、国が診療報酬を定めています。

例えば、診療報酬の1点は10円です。

医療機関が自由に価格を決めることはできません。

一方、短期滞在で日本の公的医療保険に加入していない外国人患者の場合、原則として自由診療になります。

つまり、医療機関が診療内容や追加コストを踏まえて価格を設定できます。

外国語対応、通訳、医療コーディネート、海外との連絡など、日本人患者には通常必要のない業務も発生します。

当然、こうしたコストも診療価格に反映させるべきだと思います。

実際に厚生労働省も、訪日外国人の診療価格を適切に設定するためのマニュアルを公開しています。

また、2026年3月には、一定の社会医療法人などについて、外国人患者の診療費の上限を従来の1点10円から、条件付きで最大1点30円までとする見直しが行われました。

つまり、外国人患者に対して、追加コストを踏まえた価格設定を行う方向に制度も動いています。

私は、この考え方は合理的だと思います。

医療機関もボランティアではありません。

高度な医療を提供するには、設備、人材、技術の維持に多くのお金がかかります。

それに見合った対価を得ることは、決して悪いことではないはずです。

※なお、在留外国人など、日本の公的医療保険の加入要件を満たす人は別です。外国人なら全員が自由診療になるわけではありません。

3. 日本人の医療体制を守るために「インバウンド枠」を設けてはどうか?

もちろん、外国人患者を受け入れることで、日本人患者の医療が圧迫されてしまっては本末転倒です。

現在でも医療従事者の人手不足や、病院の経営難が問題になっています。

そこに外国人患者への対応が加われば、現場の負担が増える可能性があります。

特に外国語対応や医療通訳、海外との連絡調整などは、通常の診療とは別の業務です。

そこで私が考えるのは、外国人患者向けの受け入れ枠を設けることです。

例えば、次のような仕組みです。

  • 医療インバウンドを受け入れる医療機関を指定する
  • 外国人患者向けの病床や診療枠を確保する
  • 日本人患者の診療に影響しない範囲で受け入れる
  • 通訳や医療コーディネーターの配置を進める
  • 外国人患者の診療による追加収益を、設備や人材に還元する

いわば「インバウンド病床」のような仕組みです。

もちろん、すべての病院に専用病床を設ける必要はないと思います。

病院の規模や地域の医療需要に応じて、専用病床や予約枠を設ければよいのではないでしょうか。

また、病床だけ確保しても、医師や看護師などの人員がいなければ意味がありません。

人員配置や救急対応も含めた仕組みが必要です。

日本人の患者が必要な医療を受けられることを大前提に、余力のある医療資源を活用して収益につなげる。

こうした仕組みなら、医療インバウンドにもメリットがあると思います。

4. それよりも、今の日本の医療制度を何とかしてほしい

ここまで医療インバウンドについて書いてきましたが、私が本当に疑問に感じているのは、現在の日本の医療制度です。

日本の保険診療は、全国一律の診療報酬制度によって運営されています。

患者にとっては、比較的安い自己負担で医療を受けられるという大きなメリットがあります。

一方、医療機関側から見ると、診療報酬は国が決めた価格です。

物価や人件費が上昇しても、自由に診療価格を引き上げることはできません。

医療機器や試薬、医療材料などの価格も上がります。

人材を確保するためには給与を上げる必要もあります。

しかし、医療機関の収入は診療報酬に大きく左右されます。

医療従事者の専門性や労力に対して、現在の診療報酬は十分なのだろうか。

私は、医療現場で働く立場として、疑問を感じることがあります。

専門資格を取得しても給料が上がらない。

資格取得や更新にかかる費用は自己負担。

学会参加のために休日も使う。

専門性を高めることが、必ずしも待遇改善につながるわけではありません。

もちろん、医療の質を維持するためには、誰もが自由に高額な診療費を請求できる仕組みがよいわけではありません。

患者の経済状況によって受けられる医療に大きな差が生まれることも避ける必要があります。

それでも、医療従事者の技術や労力に見合った報酬が支払われ、医療機関が安定して経営できる制度にしてほしいと思います。

外国人患者を受け入れることで収益を増やすことも一つの方法でしょう。

しかし、それ以前に、日本人に提供している医療の価格や、医療従事者の待遇についても議論してほしいです。

5. まとめ:医療インバウンドより、まずは日本の医療制度を考えてほしい

今回の医療インバウンドについて、私は受け入れそのものに反対ではありません。

自由診療として適正な価格で医療を提供できるなら、医療機関にとって収益源になる可能性があります。

人口減少によって医療需要が変化していく中で、海外の患者を受け入れることには一定の合理性があると思います。

ただし、日本人の医療体制を犠牲にしてまで受け入れる必要はありません。

外国人患者向けの病床や診療枠を設けるなど、日本人患者の医療を守る仕組みを整えることが重要です。

そして、私がそれ以上に考えてほしいのは、現在の日本の医療制度です。

医療従事者の専門性や労力に見合った報酬が支払われているのか。

医療機関が安定して経営できる診療報酬になっているのか。

物価や人件費の上昇に対応できているのか。

外国人患者を受け入れるかどうかだけでなく、こうした問題にも目を向けてほしいと思います。

外国人患者を受け入れることを議論する前に、まずは日本人に提供している医療と、それを支える医療従事者の待遇を何とかしてほしい。

医療現場で働く一人として、そう感じています。

タラオ

大学病院で働く現役の臨床検査技師、タラオです。妻(看護師)と子どもとの暮らしを守りつつ「NOと言える自由を掴む!」をモットーに資産形成に励んでいます。
​NISAでのインデックス投資、個別株、実物資産(プラチナ積立)などに挑戦中。
​このブログでは、医療従事者ならではの視点を交えた資産運用ノウハウや、ガジェット、子育て・日常のリアルな体験談を発信しています。

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