「大学病院でじっくり検査してもらった」
「近くのクリニックでパパッとエコーを当ててもらった」
医療機関を受診した際、このような経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。
実は、この2つの検査、病院が得られる収入(診療報酬)は「まったく同じ」だということをご存じですか?
今回は、検査の現場に立つ臨床検査技師の視点から、日本の診療報酬制度に潜む「ちょっとおかしくない?」と思わざるを得ない構造的な理不尽さについて、本音でお話しします。
1. 超音波(エコー)検査の診療報酬に潜む「4つの平等という名の異常」
日本の医療は「診療報酬制度」というルールに基づいて、行った処置や検査ごとに「点数(1点=10円)」が決められています。
超音波検査も例外ではなく、規定の点数が一律で決まっているのですが、ビジネスやサービス業界の常識から見ると、あまりにも不可解な現象が起きています。
①「新人の検査」も「熟練ベテランの検査」も同じ値段
何千例もの症例を見てきたベテラン技師が微小な病変を見つけ出す検査も、まだ慣れていない新人が行う検査も、患者さんが払う費用と病院に入る収入は1円も変わりません。技術料(スキルの差)という概念が診療報酬には反映されにくいのです。
②「10年前の古い装置」も「最新AI搭載装置」も同じ値段
医療機器は日進月歩で、数千万円クラスの最新AI搭載エコー装置は、画質も解析精度も飛躍的に進化しています。
しかし、10年前の型落ち装置で検査しようが、最先端のAI機で超詳細な解析を行おうが、もらえる検査代はまったく同じです。
③「簡単な計測」も「複雑な解析」も同じ値段
スクリーニング的にパパッと基本的な計測だけを行う検査も、病気のリスクを評価するために複雑な解析や多角的な観察を行う検査も、一括りで「超音波検査」として同じ点数で処理されます。
④「クリニックの1分」も「大学病院の数十分」も同じ値段
クリニックの医師が一瞬ポンとエコーを当てるだけの1分間の検査も、大学病院で医師からの細かな要求に応えるため、技師が数十分かけて全身全霊で観察する検査も、得られる収入は同じです。
2. ビジネスとして考えると「古い機械でチャチャっとやる」が正解になってしまう
この制度を、純粋な「ビジネス(事業)」の視点で冷酷に考えてみてください。
最も利益率が高い(儲かる)のはどのような方法でしょうか?
正解は、「安い型落ちの装置を使い、人件費の安い新人に、1人あたり数分でチャチャっと件数を回させること」です。
逆に、高額な最新AI装置を導入し、人件費の高い熟練技師を配置し、1人の患者さんに数十分かけて丁寧な検査を行うことは、ビジネスとしては「コストばかりかかって利益が出ない非効率な行為」になってしまいます。
現場の努力や設備投資が、収入として報われない構造になっているのです。
3. 「それでも妥協しない」現場の医療者が抱える葛藤
「じゃあ、効率だけ求めてチャチャっとやればいいじゃないか」
ビジネスの論理ならそうなります。しかし、現場の検査技師や医療従事者はそんな割り切り方はできません。
目の前にいる患者さんの病気を見落とさないため。
主治医が適切な治療方針を立てられるようにするため。
制度がどうであれ、現場の医療者はプライドと使命感を持って、今日も1件1件の検査に全力を尽くしています。
患者さん視点で見れば、「どこで受けても、どんな最新機器で受けても一律の料金で手厚い医療が受けられる」というのは、日本の公的保険制度の素晴らしい強み(恩恵)であることは間違いありません。
まとめ:頑張った人が報われる医療現場であってほしい
現場の熱意や良心、そして病院側の設備投資に頼り切っている今のシステムには、どうしても「なんだかなぁ…」と溜息が出てしまうのが本音です。
技術の高さ、かけた時間と労力、最新機器による精度の高さ。そういった「質の高い医療を提供しようとする努力」が、もう少し適切に評価され、報われるような仕組みになってほしいと願わずにはいられません。
次に病院でエコー検査を受ける際は、「この裏には技師の技術と熱意が詰まっているんだな」と、ほんの少し思い出していただけたら幸いです!

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